空き家コンパス 1分で診断

空き家の売り方

借地に建つ実家は売れますか

借地に建つ実家は、建物と借地権を合わせて売れます。相続で引き継ぐだけなら地主の承諾は要りませんが、売るには承諾が必要です(民法612条)。地主に売る、底地と一緒に売る、第三者に売るの3つの方法を比べます。地主が承諾しない場合の裁判所の手続きは、多くの事件が概ね1年以内に終わります(東京地方裁判所)。更地にして返す場合の解体費は、大田区の計算例で約254万円です(2026年10月時点)。

更新日
2026年10月7日
木々に囲まれた住宅地の道と古い家

3つの売り方の比較

項目 仲介で売る買取で売るそのまま持つ
現金になるまで 目安は3〜6か月です。買い手が見つかるまで進みません。目安は数日〜1か月です。査定額に納得すれば契約に進みます。—
手元に残る額 市場価格に近い金額です。仲介手数料が引かれます。市場価格より低くなります。仲介手数料はかかりません。固定資産税と管理費が毎年かかります。
向いている場合 駅に近い、建物がまだ使えるなど、買い手が見込める家早く手放したい場合。傷みや家財があり、そのままでは売りにくい家子どもが使う予定があるなど、手放さない理由がある場合
気をつけること 売れ残ると値下げが続きます。引き渡し後の不具合に責任を負う場合があります。提示額は業者で差が出ます。2社以上で比べてください。管理が行き届かないと、特定空家等に指定される場合があります。

仲介手数料の上限

売買価格が400万円を超える場合、仲介手数料の上限は「売買価格の3%+6万円」に消費税を加えた額です。 800万円以下の物件は、税込33万円まで受け取れる決まりがあります(2024年7月から)。 根拠は宅地建物取引業法46条と、国土交通省の告示です。

特定空家等または管理不全空家等に指定されて勧告を受けると、住宅用地の特例が外れます。 土地の固定資産税が上がるため、持ち続ける場合にも費用がかかります。

「相続した実家は、土地が借り物だった。建物だけでも売れるのか」地代を払い続けている人と、地主に返すかどうかを迷っている人に向けて書いています。

結論

借地に建つ実家は、建物と借地権を合わせて売れます。売るには地主の承諾が必要です(民法612条)。相続で引き継ぐだけなら、地主の承諾は要りません。地主が売却を承諾しない場合は、裁判所に代わりの許可を求める手続きがあります(借地借家法19条)。売らずに更地で返す場合の解体費は、大田区の計算例で約254万円です(2026年10月時点、地価からの推計)。

この記事で分かること

  • 相続と売却で、地主の承諾が要る場面と要らない場面
  • 地主に売る、底地と一緒に売る、第三者に売るの3つの違い
  • 裁判所の手続きの費用と期間、更地で返す場合の解体費

こんな場合は診断へ

  • 誰も住まない実家の地代を、毎月払い続けている
  • 地主から「更地にして返してほしい」と言われた
  • 売る場合の金額と、解体して返す場合の費用を比べたい

一つでも当てはまる場合は、空き家の診断で解体費と買取価格の目安を出せます。診断の買取価格は、土地を所有している場合の計算です。借地の家は、解体費の欄を先に見てください。土地の値段が解体費を下回る家は「売る以外も考える家」と判定されます。

借地の実家で最初に確かめること

借地の家は、契約の種類で売り方が変わります。最初に、親が残した土地の賃貸借契約書を探します。

用語

借地権 建物を所有するために土地を借りる権利です。国税庁は「建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権」と説明しています。地主が持つ土地の所有権は「底地」と呼ばれます。

確かめるのは次の4つです。

  1. 契約を結んだ日。平成4年8月1日より前に設定された借地権は、更新などに旧借地法の決まりが使われます(借地借家法 附則)
  2. 契約の種類。普通の借地権か、更新のない定期借地権か
  3. 契約の残りの期間と、地代の額
  4. 建物の登記の名義

いまの借地借家法では、普通の借地権の期間は30年です(3条)。更新後の期間は、最初の更新が20年、その後は10年です(4条)。

定期借地権は、期間を50年以上とし、更新がない契約です(22条)。国土交通省は、原則として借地人が建物を取り壊して土地を返すと説明しています。期間が終わると、借地権はなくなります。契約書で残りの期間を確かめます。

建物の登記も確かめます。借地権は、土地の上に登記された建物を持っていれば、第三者に主張できます(10条)。地主が土地を他人に売っても、建物の登記があれば借地を続けられます。

相続に地主の承諾は要りますか

要りません。相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぎます(民法896条)。借地権もこの中に入ります。

地主の承諾が必要なのは、賃借権を「譲り渡す」場合と「転貸する」場合です(民法612条)。相続は譲渡に当たらないため、承諾も承諾料も要りません。地主には、相続したことを書面で知らせておきます。

相続したあとも、地代の支払いは続きます。賃貸借は、賃料を支払うことを約束する契約です(民法601条)。誰も住んでいなくても、地代はかかります。支払いが止まると、地主は催告のうえで契約を解除できます(民法541条)。

税金の負担は、土地と建物で分かれます。固定資産税は、固定資産の所有者に課されます(地方税法343条)。土地の分は地主に、建物の分は相続人にかかります。

建物の相続登記は義務です。不動産を相続で取得したことを知った日から、3年以内に申請します。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です(不動産登記法)。令和6年4月1日より前の相続は、令和9年3月31日が期限です(法務省)。手続きは相続登記をしないまま実家を放置するとどうなりますかに書いています。

売るときに必要な地主の承諾

借地の家を売る場合は、建物と一緒に借地権を買主に渡します。これは賃借権の譲渡に当たり、地主の承諾が必要です(民法612条1項)。

承諾なしに売ると、地主は契約を解除できます(民法612条2項)。買主を探す前に、地主に売却の意向を伝えます。

承諾の見返りに、地主へ金銭を払うのが一般的です。名義書換料や承諾料と呼ばれます。国税庁は、借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料を、譲渡費用の例に挙げています(No.3255)。

承諾料の額を決めた法律はありません。全日本不動産協会の法律相談は、借地権価格の1割を基準にする場合が多いと説明しています。借地権価格は、更地の価格に借地権割合を掛けた額です。実際の額は、地主との話し合いで決まります。

注意

売買契約を先に結ぶと、承諾が得られなかった場合に買主へ引き渡せません。地主の承諾を条件にした契約にするか、承諾を得てから契約します。不動産会社に、借地権の取引の経験があるかを確かめてください。

3つの売り方の比較

借地の家の売り方は3つあります。

比べる点 地主に買い取ってもらう 底地と一緒に売る 第三者に売る
買う人 地主 一般の買主や不動産会社 買取業者、個人
地主の関わり方 買主になる 売主として一緒に契約する 譲渡を承諾する
承諾料 かからない 地主との話し合いで決める 払うのが一般的
買主が手に入れるもの 土地を自由に使える状態 土地の所有権と建物 借地権と建物
向いている場合 地主が土地を使いたい 地主も手放したい 地主が買わず、売る気もない

地主は、最初に声をかける相手です。買い取れば、地主は土地を自由に使えるようになります。金額は地主との話し合いで決まります。

底地と一緒に売ると、買主は土地の所有権を丸ごと手に入れます。買主は、地代の支払いも地主の承諾も要らなくなります。代金を地主とどう分けるかは、契約の前に書面で決めます。国が底地を持つ土地では、財務局が同時売却の制度を設けています(関東財務局)。

第三者に売る場合は、地主の承諾が必要です。買主は、地代を払いながら土地を使います。査定を頼むときは、借地権の取引の経験を不動産会社に聞いてください。仲介と買取の違いは空き家は仲介と買取、どちらで売るべきですかにまとめています。

借地権の一部と底地の一部を交換する方法もあります。交換のあとは、狭くなった土地を所有権として持てます。国税庁は、借地権と底地の交換に、譲渡がなかったものとする特例を使える場合があると説明しています(No.3505)。交換する資産の時価の差額が、高いほうの価額の20%以内であることなどが条件です(No.3502)。

地主が承諾しない場合の裁判所の手続き

地主が承諾しない場合は、裁判所に申し立てができます。借地非訟と呼ばれる手続きです。

買主が借地権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに、地主が承諾しない場合が対象です。裁判所は、地主の承諾に代わる許可を出せます(借地借家法19条1項)。裁判所は、許可の条件として金銭の支払いを命じることがあります。

東京地方裁判所の案内から、数字を拾います(2026年10月時点)。

項目 内容
申立ての時期 建物を売る前
手数料の計算の基礎 土地の固定資産評価額の2分の1
手数料の例 基礎の額が1,000万円で20,000円、2,000万円で32,000円
郵便切手 相手方が1名で6,000円
第1回の審問期日 申立てから概ね1か月〜1か月半後
終わるまでの期間 多くの事件は概ね1年以内
鑑定委員会 弁護士、不動産鑑定士など3人以上。費用は国の負担

土地の固定資産評価額が2,000万円の場合、基礎の額は1,000万円です。手数料は20,000円で、切手と合わせて26,000円になります。弁護士に依頼する場合は、その費用が別にかかります。

承諾料の額は、鑑定委員会の意見をもとに裁判所が決めます。裁判所の案内に、承諾料の割合は書かれていません。

注意

地主には、建物と借地権を自分で買い取ると申し立てる権利があります(借地借家法19条3項)。この場合、裁判所が対価を決め、買主は地主に変わります。買主には、この権利があることを先に伝えておきます。

売らずに返す場合の解体費

買主が見つからない場合は、借地権を地主に返す方法があります。契約が終わると、借主は土地に付けた物を取り除く義務を負います(民法622条、599条)。建物を解体し、更地にして返します。

このサイトの計算機で出した解体費を2つ示します(2026年10月時点)。延床112㎡の木造住宅で、残置物処分費は15万円としています。解体費は地価からの推計です。

市区 解体費 補助金 残置物処分費を足した自己負担
大田区 約254万円 上限100万円 約169万円
大阪市 約247万円 上限70万円 約192万円

補助金を使えない場合の負担は、大田区で約269万円、大阪市で約262万円です。

2つの補助は、古い木造住宅の除却が対象です。耐震診断の結果などの条件があります。大田区は、区内の中小企業と契約した場合に上限100万円です。条件と申請の順番は、大田区のページと大阪市のページに載せています。ほかの市の補助金は全国の空き家解体補助金一覧で探せます。

解体の前に、地主と書面で合意します。借地権を第三者に主張できるのは、登記された建物があるためです。建物が滅失した場合は、土地の上に掲示をすることで効力が続きます。その期間は、滅失の日から2年までです(借地借家法10条2項)。

契約の期間が満了し、更新がない場合は別の決まりがあります。借主は地主に、建物を時価で買い取るよう請求できます(借地借家法13条)。期間の途中で合意して返す場合は、この決まりの場面と異なります。解体費をどちらが負担するかは、地主との話し合いで決めます。定期借地権では、買取りを請求しない特約を付けられます(22条)。

解体費の内訳は空き家の解体費用の相場と、補助金でいくら戻りますかに書いています。

借地権を売ったときの税金

借地権を売って利益が出ると、譲渡所得の税金がかかります。法律は、土地と「土地の上に存する権利」を合わせて土地等と呼び、同じ扱いにしています(租税特別措置法31条)。

所有期間が5年を超える場合の税率は、所得税と住民税を合わせて20.315%です(国税庁 No.3208)。地主に払った名義書換料は、譲渡費用として引けます。売るために建物を取り壊した費用も同じです(国税庁 No.3255)。

相続した空き家の3,000万円特別控除は、借地の家でも対象になる場合があります。特例の対象となる敷地は、家屋の敷地の用に供されていた「土地またはその土地の上に存する権利」です(国税庁 No.3306)。主な条件は次のとおりです(令和8年4月1日現在)。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家であること
  • 相続の開始から3年を経過する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 令和9年12月31日までの売却であること

相続人が3人以上の場合は、控除の上限が1人あたり2,000万円です。使えるかどうかは、税務署か税理士に確かめてください。特例の条件は空き家の3,000万円特別控除は、どんな家なら使えますかに書いています。

借地権のおおよその価値は、国税庁の路線価図で調べられます。路線価の数字の後ろに付く記号が、借地権割合です。Aが90%、Bが80%で、10%ずつ下がり、Gが30%です。

「215D」と書かれた道路は、路線価が1㎡あたり215,000円、借地権割合が60%です(国税庁の例)。この道路に面した150㎡の土地なら、自用地としての価額は3,225万円です(形による補正をしない計算)。借地権の評価額は、60%を掛けた1,935万円になります。これは相続税を計算するための評価額で、売れる金額とは別のものです。

まずやること

  1. 土地の賃貸借契約書を探し、契約の日、種類、残りの期間、地代を確かめる
  2. 法務局で建物の登記事項証明書を取り、名義を確かめる。親の名義なら相続登記をする
  3. 地主に相続したことを知らせ、売る場合や返す場合の考えを聞く
  4. 借地権を扱う不動産会社か買取業者に査定を頼み、売れる金額を知る
  5. 解体して返す場合は、解体の見積もりを取り、市区町村の補助金を調べる
  6. 地主が承諾しない場合は、弁護士に借地非訟の申立てを相談する

まとめ

  • 相続で借地権を引き継ぐだけなら、地主の承諾は要らない。売る場合は承諾が必要で、承諾料を払うのが一般的
  • 売り方は、地主に売る、底地と一緒に売る、第三者に売るの3つ。最初に地主の意向を聞く
  • 地主が承諾しない場合は、裁判所に代わりの許可を求められる。多くの事件は概ね1年以内に終わる
  • 更地にして返す場合の解体費は、大田区の計算例で約254万円。補助金を使えると自己負担は約169万円
  • 相続空き家の3,000万円特別控除は、借地の家でも対象になる場合がある

よくある質問

Q. 借地権を相続したら、地主に名義書換料を払う必要がありますか
相続で引き継ぐだけなら、地主の承諾は要りません。民法612条が承諾を求めているのは、賃借権を譲り渡す場合と転貸する場合です。相続人は、亡くなった人の権利義務を引き継ぎます(民法896条)。地主には、相続したことを書面で知らせておきます。
Q. 地主が売却を承諾してくれない場合はどうなりますか
裁判所に、地主の承諾に代わる許可を申し立てられます(借地借家法19条)。申立ては建物を売る前に行います。東京地方裁判所は、多くの事件が概ね1年以内に終わると案内しています。手数料は、土地の固定資産評価額の2分の1を基礎に計算します。基礎の額が1,000万円なら20,000円です。
Q. 承諾料はいくらですか
額を決めた法律はありません。全日本不動産協会の法律相談は、借地権価格の1割を基準にする場合が多いと説明しています。裁判所の手続きでは、鑑定委員会の意見をもとに裁判所が額を決めます。払った名義書換料は、譲渡所得の計算で譲渡費用になります(国税庁 No.3255)。
Q. 誰も住んでいない家の地代は、払わなくてもよいですか
払う必要があります。賃貸借は、賃料を支払うことを約束する契約です(民法601条)。住んでいるかどうかは関係ありません。支払いが止まると、地主は催告のうえで契約を解除できます(民法541条)。払い続けるのが難しい場合は、売るか返すかを早めに地主と話し合います。
Q. 建物を解体して返すとき、補助金は使えますか
市区町村の解体補助金は、建物の所有者が申請する制度が多くあります。条件は市ごとに違います。大田区の計算例では、解体費が約254万円、補助金の上限が100万円です(2026年10月時点)。解体の前に、地主と返還の条件を書面で決めてください。

査定は2社以上で比べる

買取の提示額は、業者によって差が出ます。複数の金額を見てから決めてください。 市ごとの解体費との比較は、市区町村のページに載せています。

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お住まいの市の条件で計算する

建物を残して売った場合の手取りと、解体した場合の自己負担を、市の地価と補助制度から計算します。 所要時間は1分です。名前や連絡先の入力はありません。

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出典

  1. e-Gov法令検索|民法(601条、612条、541条、622条、599条、896条)
  2. e-Gov法令検索|借地借家法(3条、4条、10条、13条、19条、22条、附則)
  3. 東京地方裁判所 民事第22部|借地非訟とは(手続の種類、介入権)
  4. 東京地方裁判所 民事第22部|借地非訟事件の手続の流れ(概ね1年以内、鑑定委員会)
  5. 東京地方裁判所 民事第22部|借地非訟事件の費用(手数料の基礎、郵便切手6,000円)
  6. 裁判所|手数料額早見表(借地非訟事件の申立て)
  7. 国税庁|No.3255 譲渡費用となるもの(名義書換料、取壊し費用)
  8. 国税庁|No.4611 借地権の評価
  9. 国税庁|路線価図の説明(借地権割合 A=90%〜G=30%、215Dの例)
  10. 国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
  11. 国税庁|No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
  12. 国税庁|No.3505 借地権と底地を交換したとき
  13. 国税庁|No.3502 土地建物の交換をしたときの特例(差額20%以内)
  14. e-Gov法令検索|租税特別措置法(31条)
  15. 法務省|相続登記の申請義務化に関するQ&A
  16. e-Gov法令検索|地方税法(343条)
  17. 国土交通省|定期借地権の解説
  18. 関東財務局|国有地借地権付建物の同時売却
  19. 全日本不動産協会|法律相談「借地上の建物の譲渡」(承諾料の目安。業界団体の解説)

記事の内容は、2026年10月7日時点の各出典にもとづいています。

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この記事の情報について

一般的な情報としてまとめたものです。実際の売却条件や税額は、物件ごとに変わります。 契約の前に、宅地建物取引業者と税理士に確かめてください。