期限の一覧
| 期限 | 手続き |
|---|---|
| 3か月 相続の開始を知った日から | 相続放棄 借金のほうが多い場合の手続きです。家財を処分すると、放棄できなくなる場合があります。 |
| 10か月 相続の開始を知った日の翌日から | 相続税の申告と納付 遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合だけ必要です。 |
| 3年 相続で取得したと知った日から | 相続登記の申請 2024年4月1日から義務です。それより前に起きた相続は、2027年3月31日が期限です。 |
| 3年目の12月31日 相続が始まった日から | 3,000万円の特別控除を使った売却 正確には「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日」までです。 |
| 3年10か月 相続が始まった日から | 取得費加算の特例を使った売却 相続税の申告期限の翌日から3年以内です。特別控除とは、どちらか一方を選びます。 |
| 2027年12月31日 制度そのものの期限 | 空き家の特別控除の適用期限 自分の3年の期限より、制度の期限が先に来る場合があります。早いほうが締め切りです。 |
| 翌年3月15日 売った年の | 譲渡所得の確定申告 控除で税額が0円になる場合も申告が必要です。申告しないと、控除は適用されません。 |
期限は、物件や相続の事情で変わります。自分の場合の期限は、司法書士か税理士に確かめてください。
「実家を片付けたいが、相続放棄も考えている。先に遺品整理をしてよいのか」親の借金や値段のつかない空き家を前に、片付けと放棄の順番で止まっている人に向けて書いています。
結論
相続放棄を考えているなら、放棄の申述が先です。遺品整理はそのあとに回します。相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認をしたものとみなされ、放棄できなくなります(民法921条1号)。申述の期限は、相続を知った日から3か月以内です。経済的な価値のない形見分けと、葬儀費用の支払いは、処分にあたらないとした裁判例があります。
この記事で分かること
- 遺品整理のうち、放棄できなくなる行為とそうでない行為の線引き
- 形見分けと葬儀費用について、裁判所がどう判断してきたか
- 3か月の間に何をして、何を止めておくかの順番
こんな場合は診断へ
- 親に借金があるかどうか分からず、放棄するか決めかねている
- 実家に家財がそのまま残っていて、片付けに手を付けたい
- 空き家に値段がつくなら相続し、つかないなら放棄したい
一つでも当てはまる場合は、空き家の診断で、その市の地価から買取価格の目安を出せます。家財を残したまま売った場合の手取りも分かります。放棄するかどうかは、この数字を見てから決めます。
遺品整理が先だと、放棄できなくなる理由
民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています。単純承認とは、借金も含めて全部を相続することです。一度みなされると、あとから放棄の申述を出しても認められません。
遺品は相続財産です。家具や貴金属を売る、預金を引き出して使う、車を売る、といった行為は処分にあたります。建物を解体することも処分です。片付けの延長で解体まで進めると、放棄の道が閉じます。
用語
法定単純承認 相続人が処分などの行為をしたときに、承認の意思がなくても単純承認をしたものとみなす仕組みです(民法921条)。処分のほか、3か月の期限内に放棄も限定承認もしなかった場合(2号)、放棄した後に財産を隠したり私的に消費したりした場合(3号)も対象です。
条文には、ただし書きがあります。保存行為と、民法602条に定める期間を超えない賃貸は、処分にあたりません。建物の雨漏りを直すような、財産の価値を保つための行為が保存行為です。放棄を考えている間にできるのは、この範囲までです。
形見分けは、どこまでなら処分にあたりませんか
線引きは、経済的な価値があるかどうかです。裁判例では、着古した衣類の処分は経済的価値がほとんどなく、処分にあたらないとされました(東京高裁 昭和37年7月19日決定)。形見程度の衣類や時計を受け取る行為も、信義則上、処分にあたらないとした判決があります(山口地裁徳山支部 昭和40年5月13日判決)。
一方で、一般に経済的な価値のある財産は相続財産に属し、形見分けの名目でも処分になりえます(大審院 昭和3年7月3日判決)。東京地裁の平成12年3月21日判決も、ほとんど経済的価値のないものや、多少の価値があっても形見分けの程度であれば隠匿にあたらない、という枠を示しています。
| 行為 | 処分にあたるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 着古した衣類、日用品を捨てる | あたらない | 東京高裁 昭和37年7月19日 |
| 写真や手紙など、ほとんど経済的価値のない物を持ち帰る | あたらない | 東京地裁 平成12年3月21日 |
| 形見程度の衣類や時計を受け取る | あたらない | 山口地裁徳山支部 昭和40年5月13日 |
| 葬儀費用を遺産から払う | あたらない | 大阪高裁 平成14年7月3日 |
| 貴金属、骨董、車を売る | あたる | 民法921条1号 |
| 預金を引き出して使う | あたる | 民法921条1号 |
| 建物を解体する | あたる | 民法921条1号 |
葬儀費用については、大阪高裁が平成14年7月3日の決定で、社会的儀式として必要性が高く、相続財産から支出しても処分にあたらないと判断しています。香典や自分の財産から払う分には、そもそも相続財産の処分ではありません。
注意
「価値がない」と自分で判断した品が、あとで値段のつく品だったと分かることがあります。着物、時計、骨董、貴金属は、放棄が受理されるまで手を付けずに残します。迷う品は、処分ではなく保管にします。遺品整理業者に依頼する場合も、放棄が受理される前は、廃棄と買取を含む作業を止めておきます。
3か月の間にすること
相続放棄の申述は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所へ出します。費用は収入印紙800円と連絡用の郵便切手です(裁判所、2026年9月時点)。
3か月は、片付けの時間ではなく、財産を調べて決める時間です。順番は次のとおりです。
- 預金、借金、不動産を書き出す。通帳、督促状、固定資産税の納税通知書を集める
- 空き家の値段を確かめる。空き家の診断で、土地の値段が解体費を上回るかを見る
- 相続するか放棄するかを決める。分からなければ、期限内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる
- 放棄するなら申述書を出し、受理の通知を待つ
- 相続するなら、遺品整理と売却の準備に入る
放棄の申述をしたあとも、遺品整理を急ぐ必要はありません。2023年4月1日からは、放棄した人の保存義務は、その家を現に占有している人に限られます(民法940条)。実家に住んでおらず鍵も持っていない人には、片付けの義務はありません。
ポイント
放棄が受理されたあとの遺品は、次の順位の相続人か、相続財産清算人に引き渡します。全員が放棄した空き家の扱いは、空き家だけ相続放棄することはできますかにあります。
相続するなら、片付けは売り方で変わります
相続すると決めたら、遺品整理は自由にできます。順番は、売り方で決めます。
片付け業者に頼むと、3LDKで約17万〜50万円が目安です(LIFULL senior「みんなの遺品整理」、2026年2月時点)。建物を残したまま買取業者に売る場合は、家財を残したまま引き渡せます。処分費は買取価格から差し引かれます。このサイトの計算機では、家具と家電が一通り残った家の処分費を15万円として引いています(2026年9月時点)。
延べ床115㎡の木造、解体費約191万円、処分費15万円の条件で、買取価格の目安を出しました(2026年9月時点)。
| 市(住宅地の地価) | 土地の広さ | 土地の値段 | 家財を残したまま売る場合の買取価格の目安 |
|---|---|---|---|
| 旭川市(2.12万円/㎡) | 120㎡ | 約255万円 | 約27万〜39万円 |
| 旭川市(2.12万円/㎡) | 165㎡ | 約350万円 | 約79万〜115万円 |
| 函館市(3.6万円/㎡) | 120㎡ | 約432万円 | 約124万〜181万円 |
| 前橋市(4.9万円/㎡) | 120㎡ | 約588万円 | 約210万〜305万円 |
土地の値段が解体費を大きく上回る家は、放棄するより相続して売るほうが手元に残ります。土地が安く広さも小さい家は、買取価格がほとんど残らず、放棄を含めて考える対象になります。
家財を自分で片付けてから売るか、残したまま売るかの比較は、空き家の家財処分はいくらかかりますかにあります。家財が残ったままの家は、診断では片付ければ動く家のタイプに出ます。
まずやること
- 実家の片付けと解体を止め、貴金属や着物などの価値のある品はそのまま残す
- 親の預金、借金、不動産を書き出し、督促状と納税通知書を集める
- 空き家の診断で、土地の値段が解体費を上回るかを見る
- 放棄するなら、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する。間に合わなければ期間の伸長を申し立てる
- 相続するなら、遺品整理業者の選び方を読んでから見積もりを取る
まとめ
- 相続放棄を考えているなら、放棄の申述が先で、遺品整理はあと
- 遺品を売る、預金を使う、建物を壊すと、単純承認とみなされて放棄できない(民法921条1号)
- 経済的価値のない形見分けと、葬儀費用の支払いは、処分にあたらないとした裁判例がある
- 申述の期限は相続を知った日から3か月。財産が分からなければ期間の伸長を申し立てる
- 放棄後の保存義務は現に占有している人だけ。遠方の相続人に片付けの義務はない
よくある質問
- Q. 遺品整理業者に頼んで片付けてしまいました。もう放棄できませんか
- 片付けた中身によります。着古した衣類や日用品のように経済的な価値のない物を捨てただけなら、処分にあたらないとした裁判例があります(東京高裁 昭和37年7月19日決定)。貴金属や家具を売って代金を受け取った、業者の費用を親の預金から払った、といった場合は処分と判断されるおそれがあります。放棄の申述はできますが、債権者から単純承認を主張される可能性が残ります。早めに弁護士か司法書士に、片付けた品の内容を伝えて相談します。
- Q. 葬儀の費用を親の預金から払っても、放棄できますか
- 大阪高裁は平成14年7月3日の決定で、相続財産から葬儀費用を支出する行為は民法921条1号の処分にあたらないと判断しています。社会的儀式として必要性が高いことが理由です。ただし、身分に不相応な高額の葬儀や、香典で足りる分まで預金から払った場合は、同じ扱いになるとは限りません。領収書を残し、支出の内訳を説明できるようにしておきます。
- Q. 3か月の間に財産の全体が分かりません。どうすればよいですか
- 期限内に、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられます。伸長も3か月以内に出す必要があります。財産の調査に時間がかかる理由を書いて申し立てます。伸長が認められた期間内に、相続するか放棄するかを決めます。
- Q. 放棄したあと、実家の遺品はどうすればよいですか
- 2023年4月1日からは、放棄の時にその家を現に占有している人だけが、次の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務を負います(民法940条)。実家に住んでおらず鍵も持っていない人には義務はありません。同居していた人は、相続人か清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存します。放棄後に遺品を売ったり使ったりすると、民法921条3号で単純承認とみなされます。
- Q. 位牌や仏壇は持ち帰ってもよいですか
- 祭祀財産である位牌や仏壇は、相続財産とは別に、祖先の祭祀を主宰する人が承継します(民法897条)。持ち帰っても相続財産の処分にはあたりません。仏壇を処分する場合の手順と費用は、仏壇や神棚の処分の記事にあります。
壊す前に、査定を取る
建物を残したまま買い取る業者もあります。査定は無料で、金額を見てから断れます。 市ごとの補助金は、市区町村のページに載せています。
お住まいの市の条件で計算する
建物を残して売った場合の手取りと、解体した場合の自己負担を、市の地価と補助制度から計算します。 所要時間は1分です。名前や連絡先の入力はありません。
お住まいの地域の条件で診断する出典
- 最高裁判所|令和6年司法統計年報 家事編(相続の放棄の申述の受理 新受件数)
- 裁判所|相続の放棄の申述(3か月以内、収入印紙800円)
- 東京家庭裁判所|相続の放棄の申述(期間の伸長、費用)
- 国土交通省・総務省|令和5年3月31日事務連絡(改正民法940条の条文と施行日)
- 松浦綜合法律事務所|民法921条(法定単純承認)の条文と判例(大審院昭和3年7月3日、東京高裁昭和37年7月19日、山口地裁昭和40年5月13日ほか)
- デイライト法律事務所|相続財産から葬儀費用を支出する行為と法定単純承認(大阪高裁平成14年7月3日決定)
- デイライト法律事務所|形見分けと法定単純承認(東京地裁平成12年3月21日判決)
- LIFULL senior「みんなの遺品整理」|空き家の片付けにかかる費用(間取り別の料金相場)
記事の内容は、2026年9月30日時点の各出典にもとづいています。
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この記事の情報について
一般的な情報としてまとめたものです。控除が使えるかどうかや税額は、物件と世帯の事情で変わります。 最終的な判断は、税理士や司法書士、または管轄の税務署と法務局に確かめてから決めてください。