かかる費用の内訳
解体費と呼ばれる費用は、5つの費目に分かれます。 金額が決まっているのは解体工事の部分だけです。残りは見積もりを取るまで決まりません。
| 家財・残置物の撤去 量と間取り、搬出のしやすさで変わります。仏壇や金庫、農機具は別料金になる場合があります。 | 見積もりで確認 |
|---|---|
| 解体工事(木造) 全国平均です(2025年1〜5月、日本経済新聞)。重機が入りにくい場所は、これより高くなります。 | 約192万円 |
| 解体補助金 補助率は1/3〜1/2、上限は市ごとに違います。築年数や耐震性の条件があります。 | −50万〜−150万円が目安 |
| 整地・廃材の運搬 見積書で別立てか、含まれているかを最初に確かめてください。 | 解体費に含まれる場合が多い |
| 建物滅失登記 取り壊しから1か月以内に申請します。土地家屋調査士に頼むと数万円が目安です。 | 自分で申請すれば実費のみ |
| 自己負担の合計 | 見積もりが出るまで決まりません |
解体費の平均は、市区町村のページと同じ前提です。 補助金の上限と受付期間は市ごとに違います。お住まいの市のページで確かめてください。
「実家を解体する見積もりに、アスベストの調査費が入っていた。古い木造でも調査がいるのか」昭和や平成初期に建った実家の解体を考えていて、調査の要否と費用を知りたい人に向けて書いています。
結論
必要です。建物の解体では、建てた時期を問わず、工事の対象になる建材すべてについて石綿の有無を事前に調査します。2022年4月1日からは、床面積の合計80㎡以上の解体は、調査結果を都道府県等に報告する義務があります(環境省)。2023年10月1日からは、調査は建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が行います。分析は1検体あたり約1万〜2万円で、費用は解体費に上乗せされます。多くの市の解体補助金では、石綿の分析費と撤去費は対象外です。
この記事で分かること
- 事前調査と報告の義務が、誰に、どの規模から課されるか
- 調査と分析にかかる費用と、木造住宅で見つかりやすい石綿建材
- 石綿の調査・除去に補助金を出している市と、解体補助金での扱い
こんな場合は診断へ
- 実家が2006年8月以前に建った木造で、解体を考えている
- 解体の見積書に「アスベスト調査費」「石綿含有建材処分費」の行がある
- 解体費が高くなるなら、建物を残したまま売る方法も比べたい
一つでも当てはまる場合は、空き家の診断で、解体する場合と残す場合の手取りの目安を出せます。石綿の撤去費が上乗せされる家は、建物付きで買取に出すほうが残る金額が多くなる場合があります。
事前調査は誰が、どんな家で行いますか
石綿は2006年(平成18年)9月から輸入、製造、使用が禁止されています。それより前に着工した建物には、石綿を含む建材が使われている可能性があります(厚生労働省)。解体や改修の前には、工事の対象になる部分のすべての建材について、石綿の有無を調べます。この調査を事前調査と呼びます。
調査は3段階です。設計図書や建材の製品情報を調べる書面調査、現地で建材を確かめる目視調査、それでも分からない建材の分析調査です(厚生労働省)。2006年9月1日以降に着工した建物は、着工日を書面で確かめられれば、分析までは要りません。
2023年10月1日以降に着手する建築物の解体等工事では、事前調査は有資格者が行います。資格は、一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者です(大田区)。所有者が自分で調べることはできません。
用語
建築物石綿含有建材調査者 国の登録講習を修了し、石綿建材の有無を判定できる資格者です。一戸建て等の資格は、調査できる範囲が戸建て住宅などに限られます。解体業者が自社で資格者を置いている場合と、調査会社に外注する場合があります。
報告の義務は80㎡からです
2022年4月1日以降に着工する工事のうち、次の規模のものは、石綿の有無にかかわらず、事前調査の結果を都道府県等に報告します(環境省)。
| 工事の種類 | 報告が必要な規模 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 解体する部分の床面積の合計が80㎡以上 |
| 建築物の改修 | 請負代金の合計が100万円以上 |
| 工作物の解体・改修 | 請負代金の合計が100万円以上 |
報告するのは元請業者で、石綿事前調査結果報告システムから電子で出します(環境省)。所有者が報告書を書くことはありません。延べ床105㎡の一般的な木造住宅は、ほぼすべてが報告の対象です。
ポイント
所有者がすることは2つです。建築時期の分かる書類(建築確認通知書、登記事項証明書、固定資産税の課税明細書)を用意し、業者が調査に入る日を決めます。解体業者が調査を省いて壊すことはできないため、見積書に調査の行がない場合は、どこで調べるかを確かめます。
調査と分析の費用
分析は、建材を採取して試験機関で調べます。定性分析(石綿の有無)の料金は、試験機関が公表しています。1検体あたり税込11,000円(通常5営業日)の機関と、税込19,800円の機関があります(2026年9月時点)。理研分析センターと本庄分析センターの公表料金です。1軒の家で採取する検体は、屋根、外壁、内装、軒天など建材の種類ごとに増えます。
出張して採取から分析まで行う調査は、1軒あたり税込73,700円からの料金を公表している機関があります(本庄分析センター)。調査者の資格を持つ解体業者が見積もりに含める場合は、内訳に「事前調査費」「分析費(検体数×単価)」と書かれているかを見ます。
| 費用の種類 | 目安(2026年9月時点) |
|---|---|
| 定性分析 1検体 | 約1.1万〜2万円 |
| 出張調査+分析(1軒) | 約7.4万円〜 |
| 吹付け材の除去(300㎡以下) | 2.0万〜8.5万円/㎡(国土交通省) |
吹付け材の除去の単価は国土交通省が示している目安です(アスベスト対策Q&A)。戸建て住宅で吹付け石綿が使われている例は少ないとされています(国土交通省)。
注意
「一式」で石綿の費用が書かれた見積書は、分析の検体数も撤去の範囲も分かりません。追加請求が起きやすい項目です。分析の結果が出てから撤去費を確定する契約にし、結果の報告書を受け取ります。見積書の見方は解体費用の相場と補助金にあります。
木造住宅で見つかりやすい石綿建材
石綿建材は、飛散のしやすさでレベル1から3に分けられます。レベル1は吹付け材、レベル2は保温材、断熱材、耐火被覆材、レベル3はそれ以外の成形板などです(国土交通省)。
2006年8月以前の木造住宅で見つかるのは、多くがレベル3です。屋根のスレート、外壁のサイディング、軒天の板、内装のけい酸カルシウム板などです。レベル3は原則として手作業で外して分けて処分するため、機械で一気に壊す解体より手間と処分費が増えます。解体費が上がる原因は、石綿そのものより、手ばらしと処分の手間です。
井戸や浄化槽、ブロック塀と同じく、見積もりの前に分かっていれば金額の交渉ができます。付帯物の費用は井戸・浄化槽・ブロック塀の解体費にあります。
石綿の調査・除去に補助金はありますか
国には、民間建築物の吹付け石綿の調査に1棟25万円を限度、除去工事に3分の2以内で補助する枠組みがあります。市区町村を通じて出します(国土交通省 アスベスト対策Q&A)。実際に使えるかは市によります。掲載市の中から2つの例を挙げます(2026年9月時点)。
| 市 | 分析調査 | 除去工事 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 足立区 | 費用の2分の1、上限10万円 | 吹付け材のみ。延床1,000㎡未満は2分の1、上限200万円 | 2006年8月31日以前の建物。2025年1月から分析はすべての建材が対象 |
| 船橋市 | 全額、上限10万円 | 3分の2、上限120万円 | 吹付け材の可能性がある建物。11月30日まで |
どちらも、調査や工事の前に申請か事前協議が要ります。手続きの前に始めた調査と工事は対象外です。
一方で、解体そのものの補助金では、石綿の費用は対象外になることがあります。杉並区の木造住宅密集地域等の除却助成は、外構工作物と石綿の分析・撤去費を対象外と明記しています。解体補助金の申請の順番は解体補助金の申請の手順にあります。
まずやること
- 建築確認通知書か登記事項証明書で、実家の着工日と建築年を確かめる
- 2006年8月以前なら、解体業者に事前調査の資格者がいるか、外注先はどこかを聞く
- 見積書に、事前調査費、分析費(検体数×単価)、石綿建材の撤去・処分費が分けて書かれているかを見る
- 市の環境課か建築指導課に、石綿の調査・除去の補助金があるかを聞き、あれば工事の前に申請する
- 空き家の診断で、解体する場合と建物を残して売る場合の手取りを比べる
まとめ
- 解体の前の石綿の事前調査は必須で、2023年10月からは有資格者が行います
- 床面積80㎡以上の解体は、元請業者が調査結果を都道府県等に報告します
- 分析は1検体あたり約1.1万〜2万円で、木造住宅の多くはレベル3の成形板です
- 石綿の調査・除去に補助金を出す市があり、申請は調査や工事の前です
- 解体補助金では石綿の費用が対象外の市があるため、要綱で確かめます
見積もりで確かめること
- 残置物の撤去が見積もりに入っているか、別料金か
- 廃材の運搬と処分費が、総額に含まれているか
- 整地まで行うのか、更地に均すだけなのか
- 近隣への挨拶と養生の費用は、どちらが持つのか
- 補助金の申請書類を、業者が用意するのか
総額に何を含めるかは、業者によって違います。項目をそろえてから、金額を比べてください。
よくある質問
- Q. 2006年以降に建った家でも調査は必要ですか
- 事前調査そのものは、建てた時期を問わず必要です。2006年(平成18年)9月1日以降に着工した建物は、着工日を建築確認通知書などの書面で確かめます。確かめられれば石綿を含む建材はないものとして扱え、分析までは要りません(厚生労働省)。書面がなく着工日を証明できない場合は、目視や分析で確かめます。
- Q. 調査費や報告の手続きは所有者が払い、所有者が出しますか
- 報告は元請業者の義務で、所有者が出すことはありません(環境省)。調査と分析の費用は解体費に含めて所有者が払うのが一般的です。見積書に事前調査費と分析費(検体数×単価)が分けて書かれているかを見ます。分析の結果報告書は、所有者も受け取っておきます。
- Q. 木造住宅で吹付け石綿が出ることはありますか
- 少ないとされています(国土交通省 アスベスト対策Q&A)。木造住宅で見つかるのは、屋根のスレートや外壁のサイディングなどレベル3の成形板が中心です。飛散しにくい建材ですが、手作業で外して分けて処分するため、解体費に上乗せされます。
- Q. 石綿が見つかったら、解体の補助金は使えなくなりますか
- 補助金そのものは使えます。ただし、石綿の分析費や撤去費が補助の対象外になる市があります。杉並区の木造住宅密集地域等の除却助成は、石綿の分析・撤去費を対象外と明記しています。足立区と船橋市のように、石綿の調査・除去に別の補助金を出す市もあります。解体補助金と石綿の補助金は担当課が違うことが多く、どちらも工事の前に申請します。
- Q. 調査を省いて解体すると、どうなりますか
- 事前調査と報告は、大気汚染防止法と石綿障害予防規則で義務づけられています。省いた場合の責任は元請業者に生じますが、近隣への飛散や作業者の健康被害は所有者のトラブルにもなります。調査をしないと言う業者には頼まず、有資格者による調査と報告の控えを求めます。
家財が残ったまま査定を取る
処分費込みで引き取る業者もあります。査定は無料で、金額を見てから断れます。 市ごとの補助金と解体費の比較は、市区町村のページに載せています。
売らずに片付けだけ先に済ませたい場合は、不用品回収の見積もりを取ると費用の目安がつきます。
片づける前に、いくらで売れるかを見る
家財が残ったままでも、売れるかどうかの目安は出せます。 7つの質問に答えると、手元に残る金額の目安が分かります。所要時間は1分です。
お住まいの地域の条件で診断する出典
- 環境省|石綿事前調査結果の報告について(解体は床面積の合計80㎡以上、改修は請負代金100万円以上、報告システム)
- 環境省|4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします(令和4年4月1日、対象工事の規模)
- 厚生労働省|石綿の事前調査リーフレット(2006年9月から禁止、書面・目視・分析の3段階、令和5年10月1日から有資格者)
- 大田区|建築物および工作物は有資格者による石綿事前調査が必要です(令和5年10月1日、資格の種類)
- 国土交通省|アスベスト対策Q&A(レベル1〜3、除去費用の目安 300㎡以下 2.0万〜8.5万円/㎡、調査補助25万円/棟、除去補助2/3以内、戸建て住宅での吹付け材)
- 足立区|アスベスト調査・除去工事に関する助成制度(分析調査 2分の1・上限10万円、除去 2分の1・上限200万円)
- 船橋市|民間建築物アスベスト分析調査・除去等の補助(分析調査 全額・上限10万円、除去 3分の2・上限120万円、2026年11月30日まで)
- 杉並区|木造住宅密集地域等の除却建物への助成制度チラシ(石綿分析・撤去費は対象外)
- 理研分析センター|アスベスト分析の料金(定性分析 1検体 税込11,000円)
- 本庄分析センター|アスベスト分析の料金(定性分析 1検体 税込19,800円、出張調査 税込73,700円〜)
記事の内容は、2026年9月27日時点の各出典にもとづいています。
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この記事の情報について
費用の目安は、一般的な相場としてまとめたものです。実際の金額は、建物の構造、面積、立地で変わります。 契約の前に、2社以上から見積もりを取って確かめてください。