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相続した家の手続き

海外に住んでいても実家を相続して売れますか

海外に住んでいても、日本の実家は相続して売れます。印鑑証明書の代わりに在外公館の署名証明(1通1,700円相当)、住民票の代わりに在留証明(1,200円相当)を使います。売買代金は買主が10.21%を源泉徴収し、翌年2月16日から3月15日の確定申告で精算します(国税庁、2026年10月時点)。納税管理人と代理人を立てれば、相続登記から決済、申告まで帰国せずに進められます。署名証明の2つの形式、源泉徴収が不要になる条件、還付までの期間、2024年4月からの相続登記の義務と国内連絡先の記載までまとめています。

更新日
2026年10月20日
路地に面して並ぶ古い二階建ての家

期限の一覧

期限 手続き
3か月 相続の開始を知った日から 相続放棄 借金のほうが多い場合の手続きです。家財を処分すると、放棄できなくなる場合があります。
10か月 相続の開始を知った日の翌日から 相続税の申告と納付 遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合だけ必要です。
3年 相続で取得したと知った日から 相続登記の申請 2024年4月1日から義務です。それより前に起きた相続は、2027年3月31日が期限です。
3年目の12月31日 相続が始まった日から 3,000万円の特別控除を使った売却 正確には「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日」までです。
3年10か月 相続が始まった日から 取得費加算の特例を使った売却 相続税の申告期限の翌日から3年以内です。特別控除とは、どちらか一方を選びます。
2027年12月31日 制度そのものの期限 空き家の特別控除の適用期限 自分の3年の期限より、制度の期限が先に来る場合があります。早いほうが締め切りです。
翌年3月15日 売った年の 譲渡所得の確定申告 控除で税額が0円になる場合も申告が必要です。申告しないと、控除は適用されません。

期限は、物件や相続の事情で変わります。自分の場合の期限は、司法書士か税理士に確かめてください。

「海外に住んでいる。親の家を相続したが、帰国して手続きをする時間がない」日本に住民票がない人が、日本の実家を相続して売るときに向けて書いています。

結論

結論から書きます。海外に住んでいても、日本の実家は相続して売れます。印鑑証明書の代わりに、在外公館で署名証明と在留証明を取ります(手数料は1通1,700円と1,200円相当)。売買代金を受け取るとき、買主が代金の10.21%を源泉徴収します。確定申告で精算すれば、払いすぎた分は戻ります(国税庁、2026年10月時点)。決済も申告も、代理人と納税管理人を立てれば帰国せずに進められます。

この記事で分かること

  • 印鑑証明書の代わりになる署名証明と在留証明の取り方と費用
  • 売買代金から引かれる源泉徴収10.21%の仕組みと、戻ってくる時期
  • 帰国せずに相続登記、契約、決済、確定申告を進める順番

こんな場合は診断へ

  • 海外に住んでいて、日本の実家を相続した
  • 日本に住民票がなく、印鑑証明書が取れない
  • 帰国の回数を減らして売却を終えたい

一つでも当てはまる場合は、空き家の診断で、実家のある市の土地の値段から売却の目安を出せます。所要時間は約1分です。海外からも使えます。

海外に住んでいても相続と売却はできますか

できます。相続人が海外に住んでいても、日本の不動産を相続する権利は変わりません。売るときも、日本に住む人と同じ手続きです。

違うのは3つです。印鑑証明書と住民票が取れないこと、売買代金から税金が源泉徴収されること、確定申告を日本で行うことです。この3つに備えれば、帰国は1回か、代理人を使えば0回で済みます。

相続した家の名義を変える相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。取得を知った日から3年以内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。2024年3月までに相続した家は、2027年3月31日が期限です(法務省、2026年10月時点)。海外在住でも期限は同じです。

用語

非居住者 日本に住所がなく、1年以上続けて居所もない人です(国税庁)。海外の勤務先や自宅で暮らす人は、国籍が日本でも非居住者に当たります。税金の扱いがこの区分で変わります。

印鑑証明書の代わりに何を出しますか

日本に住民登録がない人は、印鑑証明書を取れません。代わりに、住んでいる国の日本大使館か総領事館で「署名証明」を取ります。領事の前で書類に署名し、本人の署名だと証明してもらう書類です。

住民票の代わりは「在留証明」です。現地に3か月以上住んでいることを証明します。相続登記の住所証明と、売買契約の住所の確認に使います。

書類 代わりになるもの 手数料 取り方
印鑑証明書 署名証明 1通1,700円相当 本人が公館へ行く。代理・郵送は不可
住民票 在留証明 1通1,200円相当 本人か代理人。オンライン交付もある

手数料は外務省が円で示している額で、現地通貨で払います。在アメリカ合衆国大使館では、2026年4月から2027年3月までの申請で在留証明が8ドル、署名証明が11ドルです。窓口での申請なら、在留証明は申請から約1〜2時間で受け取れます(在アメリカ合衆国日本国大使館、2026年10月時点)。

署名証明には2つの形式があります。形式1は、日本から送られた書類(委任状や遺産分割協議書)に公館の証明書を綴じて割り印する形です。形式2は、署名だけを単独で証明する形です。どちらの形式にするかは提出先の意向で決まるため、申請の前に司法書士か不動産会社に確かめてください(外務省)。

注意

署名証明は、本人が公館の窓口へ行く必要があります。郵送や代理の申請はできません。公館から遠い場所に住んでいる人は、外国の公証人が作った署名証明でも相続登記に使えます(法務省の先例)。その場合は和訳を付けます。在留証明は、2025年5月27日から一部の公館で電子証明書として来館なしで受け取れます。

ポイント

事前に署名した書類は無効です。公館で領事の前で署名し直します。日本の司法書士から委任状や協議書を受け取ってから、公館の予約を取ってください。

相続登記を帰国せずに進める

相続登記は、日本の司法書士に委任して進めるのが一般的です。委任状に署名証明を付け、在留証明を住所の証明として出します。登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の1,000分の4です(法務局)。

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書に全員が署名します。海外に住む相続人は、協議書にも署名証明を付けます。兄弟が日本にいる場合は、その人が実印と印鑑証明書で進めます。詳しい流れは遺産分割協議書は空き家の売却にいつ必要ですかにまとめています。

海外に住む人が名義人になるときは、2024年4月1日から「国内連絡先」を登記に記載します。日本に住む親族や司法書士を連絡先にできます。連絡先になる人の承諾書と印鑑証明書が要ります(法務省)。

用語

相続人申告登記 相続登記の期限に間に合わないとき、自分が相続人だと法務局に申し出て義務を果たす仕組みです。この登記だけでは家を売れません。売るには別に相続登記が必要です。

売買代金の10.21%が源泉徴収されます

非居住者が日本の不動産を売ると、買主が売買代金の10.21%を源泉徴収し、翌月10日までに税務署に納めます(国税庁、2026年10月時点)。売主の手元には、代金の89.79%が入ります。

売買代金 源泉徴収される額 手元に入る額
1,000万円 102万1,000円 897万9,000円
1,800万円 183万7,800円 1,616万2,200円
3,000万円 306万3,000円 2,693万7,000円

この表は、売買代金に10.21%を掛けた計算です。仲介手数料や登記費用は含めていません。

源泉徴収が不要になる場合があります。買主が個人で、自分か親族が住むために買い、代金が1億円以下のときです(国税庁 No.2879)。実家を隣の人や親族に売る場合は、この条件に当たることがあります。

注意

居住者か非居住者かは、土地の引渡しの日で判定します(国税庁の質疑応答)。契約のときに海外にいて、決済の前に帰国しても、引渡し日に非居住者なら源泉徴収されます。「帰国してから決済すれば引かれない」とは限りません。2027年分以後は、防衛特別所得税が加わります。

源泉徴収は税金の前払いです。実際の税額は、売却益に税率を掛けて計算し、確定申告で精算します。利益が小さければ、引かれた分の多くが戻ります。

確定申告と納税管理人

非居住者でも、日本の不動産を売った利益には日本の所得税がかかります。申告の期限は、売った年の翌年2月16日から3月15日までです(国税庁 No.1932)。

申告の前に「納税管理人」を決め、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を税務署に出します。納税管理人は日本に住む親族でも、税理士でも構いません。申告書の提出と納税、還付金の受け取りを代わりに行います。

還付の処理は、e-Taxで出した申告なら3週間程度、確定申告の期間中は1か月から1か月半程度です(国税庁)。還付だけの申告は、売った年の翌年1月1日から5年間出せます。

相続した家を売るときの税金の計算は実家を売ったときの税金はいくらかかりますかに書いています。相続空き家の3,000万円特別控除は、2027年12月31日までの売却が対象です。国税庁のページには、売主が居住者に限るという要件は書かれていません。海外在住で使えるかは、税理士か税務署に確かめてください。空き家の3,000万円特別控除は、どんな家なら使えますかで要件を確認できます。

ポイント

相続税の申告も、海外在住なら納税管理人を立てます。期限は亡くなった日の翌日から10か月以内です。日本に住所がない相続人は、日本国内の財産だけが課税の対象になります。日本国籍で、亡くなった人か相続人が10年以内に日本に住んでいた場合は、海外の財産も対象です(国税庁 No.4138)。

契約と決済を帰国せずに行う

売買契約の前にある重要事項説明は、2021年3月30日からテレビ会議で受けられます(国土交通省)。契約書も、相手の承諾があれば電子書面で受け取れます。

決済は、代理人に委任して進めます。委任状に署名証明を付け、司法書士が本人確認をします。代金は日本の銀行口座で受け取ります。海外の口座へ送る場合、3,000万円相当額を超える送金は、日本に住む買主の側に日本銀行への報告義務があります。売主の非居住者には報告義務がありません(日本銀行の外為法FAQ)。

遠方からの売却の進め方は遠方の実家を、現地に行かずに売れますかにまとめています。家財が残っている家は、片付けを業者に任せてから売るか、そのまま買取に出すかを選びます。診断と査定は、実家のある市がどこでも受けられます。

まずやること

  1. 日本の司法書士を決め、相続登記に必要な書類(委任状・協議書)を送ってもらう
  2. 住んでいる国の日本大使館か総領事館に予約し、署名証明と在留証明を取る
  3. 相続登記を申請する(取得を知った日から3年以内。国内連絡先も記載)
  4. 空き家の診断で売却の目安を見て、不動産会社か買取業者に査定を頼む
  5. 納税管理人を決め、届出書を税務署に出す
  6. 決済の前に、買主の源泉徴収の有無を不動産会社に確かめる
  7. 売った年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をし、源泉徴収の精算をする

まとめ

  • 海外在住でも実家は相続して売れる。印鑑証明書の代わりは署名証明、住民票の代わりは在留証明
  • 署名証明は本人が公館へ行く。1通1,700円相当。形式は提出先に確認
  • 買主が売買代金の10.21%を源泉徴収する。確定申告で精算し、払いすぎは戻る
  • 納税管理人と代理人を立てれば、登記、決済、申告まで帰国せずに進められる
  • 相続登記の期限は3年以内。2024年3月までの相続は2027年3月31日まで

よくある質問

Q. 署名証明は郵送で取れますか
取れません。署名証明は、本人が日本大使館か総領事館の窓口へ行き、領事の前で署名します。代理の申請もできません(外務省、2026年10月時点)。在留証明は、委任状があれば代理で申請できる場合があり、2025年5月27日から一部の公館では電子証明書として来館なしで受け取れます。公館から遠い人は、外国の公証人が作った署名証明でも相続登記に使えます。和訳を添えます。
Q. 源泉徴収された10.21%は戻ってきますか
確定申告で精算し、実際の税額より多く引かれていれば戻ります。売った年の翌年2月16日から3月15日までに、納税管理人を通じて申告します。還付の処理は、e-Taxなら3週間程度、確定申告の期間中は1か月から1か月半程度です(国税庁)。還付だけの申告は、翌年1月1日から5年間出せます。
Q. 買主が親族なら源泉徴収はされませんか
買主が個人で、自分か親族が住むために買い、売買代金が1億円以下のときは、源泉徴収は不要です(国税庁 No.2879)。親族の範囲は国税庁のページに書かれていません。該当するかは、買主側の税務署か税理士に確かめてください。買主が会社や、住む目的でない個人のときは源泉徴収されます。
Q. 納税管理人は誰に頼めますか
日本に住む個人でも法人でも頼めます。親族でも税理士でも構いません。「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を、売主の納税地の税務署に出します。提出の時期は、納税管理人を決めたときか出国の日までです(国税庁)。相続税の申告にも、別に相続税の納税管理人届出書が要ります。
Q. 海外に住んでいると相続空き家の3,000万円特別控除は使えませんか
国税庁のページ(No.3306)には、売主が日本に住んでいることを求める要件は書かれていません。要件は、昭和56年5月31日以前の建築、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却、売買代金1億円以下などです。2027年12月31日までの売却が対象です。使えるかどうかは、売る前に税理士か税務署に確かめてください。

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出典

  1. 外務省|在外公館における証明(署名証明 1通1,700円相当、在留証明 1,200円相当、形式1・形式2、代理・郵送不可)
  2. 外務省|証明のオンライン申請と電子証明書(令和7年5月27日から一部証明をオンライン交付)
  3. 在アメリカ合衆国日本国大使館|各種証明(2026年4月〜2027年3月 在留証明$8・署名証明$11、窓口は即日交付)
  4. 法務省|外国に居住する人の印鑑証明書に代わる署名証明(領事の署名証明、外国公証人の署名証明の先例)
  5. 在ロサンゼルス日本国総領事館|日本国内の不動産登記手続に要する署名証明について(公証人証明の要件、和訳)
  6. 法務省|相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行、3年以内、10万円以下の過料、施行前の相続は令和9年3月31日まで)
  7. 法務省|海外居住者の国内連絡先事項の登記(令和6年4月1日から)
  8. 法務局|相続登記の手続ハンドブック 遺産分割協議編(登録免許税 1,000分の4)
  9. 国税庁 No.2879|非居住者等から土地等を購入したとき(10.21%、翌月10日、1億円以下の居住用は不要、令和9年分以後は防衛特別所得税)
  10. 国税庁|非居住者等から不動産を購入した場合の源泉徴収(リーフレット)
  11. 国税庁 質疑応答事例|居住者・非居住者の判定は土地の引渡し日
  12. 国税庁 No.1932|海外勤務中に不動産を売却した場合(申告期限 翌年2月16日〜3月15日、納税管理人)
  13. 国税庁 No.1923|海外転勤と納税管理人の選任(届出書の名称、提出先)
  14. 国税庁|所得税・消費税の納税管理人の届出手続(提出時期)
  15. 国税庁 No.2875|居住者と非居住者の区分(1年以上)
  16. 国税庁 No.2030|還付申告(翌年1月1日から5年間)
  17. 国税庁|確定申告Q&A 還付金の処理期間(e-Tax 3週間程度、期間中1か月〜1か月半)
  18. 国税庁 No.3306|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(令和9年12月31日まで)
  19. 国税庁 No.4138|相続人が外国に居住しているとき(国内財産のみ課税、10年以内の住所、納税管理人)
  20. 国税庁 No.4205|相続税の申告と納税(10か月以内)
  21. 国土交通省|売買取引のIT重説の本格運用開始(令和3年3月30日)
  22. 国土交通省|重要事項説明書等の電磁的方法による提供(令和4年5月18日施行)
  23. 日本銀行|外為法に基づく報告のFAQ(3千万円相当額以下は報告不要、報告者は居住者)

記事の内容は、2026年10月20日時点の各出典にもとづいています。

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この記事の情報について

一般的な情報としてまとめたものです。控除が使えるかどうかや税額は、物件と世帯の事情で変わります。 最終的な判断は、税理士や司法書士、または管轄の税務署と法務局に確かめてから決めてください。